きはだやの風呂敷
藍挟み胡麻

唐棧は1500年代の後半に日本にもたらされます。
当時、日本に入って来る織物の多くは権力者への献上品の場合が多かったようですが
この唐棧以降は交易品としてもたらされる事が増えます。
日本に入って来る年代に合わせて「古渡り」「中渡り」「新唐」等と分けられていますが
あまり厳密なものではないと思われます。
また、縞も「紅唐」「万筋「千筋」「西川」と称されるものがありますが、それも固定化したものでなく
文献によっても違う様です。
今回、月間キャレルに掲載していただいたのは、唐棧の中でも僕のお気に入りの縞です。
この「あいばさみごま」は古渡りの見本帳で見たものです。漢字で書くと「藍挟み胡麻」。
字を見るとどんな縞かが見える気がしませんか?
唐棧は二本の糸を引き揃えて整経をします。縦糸6本で藍色の縞が構成されています。
その二本の藍縞に挟まれる様にして黄色の点々が並びます。これは縦糸2本で黄色の縞を作るのですが
緯糸に紺の糸を織る事によって、縞が点々に見えるのです。
粋人たちはこの点々を「胡麻」と見たのでしょう。更にその中には細く赤い縞が糸4本で構成されています。
この見えるか見えないかほどの赤い縞が当時の粋人達の人気を買った事は想像に難くないと思います。


また、唐棧の素材である木綿は800年頃に日本に渡ってきますが、間もなく栽培が途絶えてしまいまい
その後は長く大陸からの輸入に頼る事になるため、大変に高価な物でした。
唐棧が日本に渡ってきた当時、僅かながら国内でも木綿の生産は行われていますが、気候の違いもあり
長い繊維の綿を採る事ができませんでした。
そのため、極細の綿糸で織られ、美しい縞を持った唐棧は大変に珍重されたそうです。

きはだやの唐棧もその例に倣い、エジプト綿の最高級品種「ギザ」を使い、100番の単糸を使って織りました。
量産品の木綿にないしなやかさと高光沢をもった品種です。
ぽってりとした感触は木綿の持つ特徴の一つですが、きはだやの唐棧はつるりとした質感と
光沢が特徴で、唐棧が渡って来た当時と同じよう驚きをうけることでしょう。
100番の糸を単糸で織る事は大変に難しく、多くは双糸で使われます。
また、かつて、「綿100%」と言っても、実際には何かしらの合繊の混ざったものが多かったと聞きます。
そんな中で純粋に綿100%の織物を作りたいと思って探してきたのがこのギザ品種でした。
きはだやでは「藍挟み胡麻」の他にも100番単糸を使った「みじん格子」や「万筋」もありますが
恐らくは日本で一番小さな格子模様、或は縞なのではないでしょうか?